My CoCoon Days New CoCoon Impression

新 CoCoon「NDR-XR1」「NAV-E900」インプレッション
続いては「CoCoon ホームシアターシステム NAV-E900/E600」です。発表までノーマークだった分、個人的にはハイブリッドレコーダよりもこっちの方が気になっていたりします。いろいろと希望をあげるとキリがないのですが、なかなか面白そうな製品でした。

NAV-E900 のシステムユニット。このユニットは E900、E600 で共通になっています。
想像以上にコンパクトでした。薄く見せるために前面に向かって絞り込んであるデザインの効果もあるのでしょうが、実際のモノも小さいです。同社のデジタルアンプ「S-master」を搭載した「DAV-S880/S550」をベースにしているおかげでしょうか。
筐体にはかなり厚手のアルミ素材を奢っており、薄型ながらも重厚感・高級感に溢れています。見るからに高そうな筐体。(^^;
DVD トレイの下部には USB 端子がついています(背面にも 1 ポート配備)。Net MD 機器を USB 接続したり、別途 USB HDD を接続して内蔵 HDD に溜め込んだ楽曲データをバックアップしたりできるようです。しかし USB は 1.1 規格なのでバックアップには滅茶苦茶時間がかかりそうな予感(でも一度取ればあとは差分バックアップ可能らしい)。
操作ボタン周り。NDR-XR1 にもありましたが、真ん中に段を設けて操作ボタンを配置するのは最近のソニーデザインの流行りなのでしょうか?
本体の液晶表示部はかなりシンプル。操作用のインタフェースとしては TV 画面を使ってくださいということでしょう。他にも、やたら凝ったデザインの MG メモステスロットがあったり、デザイン・質感へのこだわりは現行 CoCoon 3 ジャンルの中で一番ではないでしょうか?熱伝導性の高いアルミ筐体は、デザイン以外に放熱効果によって静音性に一役買っているところもありそうです。音にこだわった製品ならでは。
背面の入出力パネル。
映像出力で高画質なのは D 端子(もちろんプログレッシブ出力対応)のみで、RCA のコンポーネント端子はナシ。
音声系はアンプ内蔵であることと著作権保護の観点からアナログ出力しかありません。このセンターユニットを核としたシステムアップは望むべくないのはちょっと残念ですね。オールインワンのホームシアターパッケージなので仕方ないのですが。
TV 録画機能のユーザーインタフェース。
基本的に CSV-E77 や NDR-XR1 の画面デザインを踏襲していますが、やはりこれも微妙に使い勝手が異なっています。機器間で操作系を統一してくれ〜>ソニーさん
「Open Key Style」のお試しダイアログ。機能パックを購入するまでは、各機能の起動ごとにこのメッセージが表示されます。
家電なのにシェアウェアみたいな使用制限ダイアログが出るのって、なんだか変な感じ・・・。
NAV-E シリーズにはなんと日本語入力機能として同社の携帯電話にも採用されている予測変換入力システム「POBox」が搭載されています。リモコン+ソフトウェアキーボードでちまちまやるよりは、POBox でサクサク入力できる(リモコンも数字ボタンが携帯電話の文字入力と同じように使える)方が最近の携帯電話ユーザーには便利でしょう。
でも NDR-XR1 には搭載されていなかったり、この辺もちぐはぐさを感じてしまう部分です。ソフトウェアアップデートで対応してくれないものでしょうか。
音楽再生が可能な HDD ジュークボックス機能。2 階層にディレクトリ分類でき、個人フォルダ→アルバム分類という感じで曲データを整理できます。このあたりの仕組みは HAR-D1000 や DAN-Z1 など今までの HDD オーディオシステムから十分にフィードバックを受けて開発されているようです。
HDD 内には出荷時点で 39 万曲(!)分の楽曲名データを収録しており、たいていの音楽 CD であれば CD を挿入するだけで曲情報が参照できるほか、HDD にない楽曲名データに関してもネットワークを駆使して Gracenote の CDDB から曲情報を取得することが可能です。もちろん HDD への録音時には取得されたタイトル等の情報はそのまま記録でき、お手軽にミュージックライフを満喫できるというわけ。
HDD ジュークボックス機能における録音画面。
リモコンによるオペレーション自体はイージーなのですが、録音スピードが遅め。ATRAC3 録音だと 1.2 倍速とかその程度しか出ないようです(PCM 録音もそんなに速くない)。Linux が動作する程度の低速な CPU でソフトウェアエンコードしているとしたらそんなものでしょうが、手持ちの音楽 CD を全部 HDD に貯めて・・・とか考えると気が遠くなりそうです。
こういうのって一気にガーッとライブラリ化できないと使い勝手が悪いですよね・・・。

内蔵 HDD からのオーディオデータのチェックアウトは、非サポートながらネットワークウォークマンでも可能なようです(ネットワークウォークマン側で公式にはサポートしていない模様)。でもあくまで「保証外」なので、ネットワークウォークマンの利用は自己責任でよしなに、という感じです。
PCM で取り込んだオーディオデータをリアルタイムで ATRAC3 に変換しつつチェックアウト、といった芸当はできないようなので、チェックアウト用は初めから ATRAC3 で取り込んで、高音質な PCM フォーマットは付属スピーカで楽しむもの、という割り切りが必要になります。そのわりにはオーディオ用に使える HDD 容量が 20GB 弱しかないのは淋しいですね・・・。この製品では TV 録画もサポートしているため、HDD 領域が混在だとフラグメントが発生しやすい(ビデオデータとオーディオデータではファイルサイズが違いすぎるため)ことを理由に HDD はパーティショニングされてしまっているのですが、「Open Key Style」でオーディオ機能のみ購入して TV 録画は要らない、という人にとってはなんとも納得のいかない仕様ですよね。用途によってパーティション構成を選択できるような仕様にはならないものでしょうか。

HDD ジュークボックスの音質は良好。動作音がけっこう耳についた CoCoon チャンネルサーバーとは違い、静音性にも気を配って作られているようなので(デモ環境は周囲がうるさくてどの程度静かかは判断できませんでしたが)純粋に「音楽を聴くための環境」としては悪くないと思います。しかし、どちらかというと DVD 等のマルチチャンネル AV ソース向けに作られたスピーカセットなので、ピュアオーディオとしての音質を追求する用途には向かないでしょう。が、この CoCoon の目指すところである「イージーに、なおかつ常に音楽と共にある生活」といったコンセプトには十分耐え得るレベルの音は出ているように思いました。
また、PC を持ち出さなくても CoCoon のみで Net MD や MG メモリースティックに音楽データをチェックアウトできるのはやはり便利ですね。今までネットワークオーディオといえば PC が必須というイメージがありましたが、今後はこういった専用機にオーディオデータを溜め込んでおいて、手軽にチェックアウトできる機器が増えてくるのではないでしょうか。個人的には NAV-E900 の中でこの HDD ジュークボックス機能+チェックアウト機能がいちばん気に入りました。

しかし、これは現行の CoCoon 全機種に共通していえることなのですが、操作時の反応速度の遅さはいかんともしがたいですね。CSV-E77 の毎度ワンクッション置いた感じの反応速度にもけっこうイライラさせられましたが、NDR-XR1 と NAV-E900 のデモ機ではそれ以上に反応が鈍い(特にアプリケーションの切り替え時)という印象を受けました(製品版では改善される可能性がありますが、発売までの時間を考えるとあまり期待はできなさそうです)。PC 的に考えると CPU が遅いとかメモリが足りないといった原因が考えられますが、CPU の動作速度と発熱・静粛性はトレードオフの関係にあるので、AV 機器としては単純に処理性能を高めれば良いというわけにもいかず、難しいところなのでしょう。でも、汎用機でもないのに動作が鈍いというのはちょっと許せない部分ではあるので、何とかしてほしいですね。ATRAC3 のエンコードが遅いのはソフトウェア処理だからでしょうが、「Open Key Style」で購入されるかどうかも分からない機能のためにハードウェアエンコーダを搭載してコスト高になっていいのか、といった問題もあり、これまた難しい問題です。
個人的には、その辺をクリアするにはやっぱり ATRAC3 DSP はハードウェアで搭載して、ジュークボックス機能に特化した単体デッキ版 CoCoon を出してくれれば言うことないんですが。

今回、新製品を体験してみて感じたのは、「CoCoon」ということで基本的なコンセプトや画面のイメージなどには共通の約束事があるものの、実現できる機能に差異があったり(共通であるはずの「TV 録画」という部分を取ってみても、三者三様に使い勝手が全然違う)、操作性が異なったりして必ずしも同じブランドの製品であるとは思えなかったことでしょうか。例えて言うなら、同じ Linux でも別々のディストリビューションを使っているような、そんなイメージでした。
おそらくこれは「Linux を搭載したネットワーク家電」というキーワードと共通のプラットフォーム(MontaVista Linux)および基本 UI だけが与えられ、別々のチームが開発したものを寄せ集めて「CoCoon」という名前をつけたせいで、このように統一感のない製品になってしまったのではないでしょうか。この点は、非常に残念に感じています。しかし、言い換えればこの 3 製品(CSV-E77、NDR-XR1、NAV-E900/E600)が出揃った現在がようやく「CoCoon 第一弾」が出揃い、ブランドとしてのスタートラインに立つことができた瞬間、ということができそうです。これから、それぞれの製品間で各機能の共通化を図り、アイディアを出し合って「CoCoon」というブランドを作り上げていく作業が始まるのではないでしょうか。
2002 年までで ADSL 市場は完全に立ち上がり、今年は FTTH 元年になるとも言われています。さらに年末には地上波デジタル放送のサービス開始を控え、来年の今頃は「ネットワーク対応デジタルレコーダ」が花開いていることでしょう。「CoCoon」の最初のターゲットは、一年後のニューモデルになるのではないでしょうか?気の早い話ですが、そのあたりを見据えてこの先しばらくのデジタルレコーダ市場を見守ってみると、「買い時」の判別がしやすいのではないでしょうか。

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